夕方。ケンプのベートーヴェン・ピアノソナタ全集(モノラル盤)からいくつか掻い摘んで聴いていた。この全集は、学生時分、中古CD屋に入り浸っていた頃に手に入れた盤だ。あの頃は、少いお金で往年の名盤を手に入れることに奔走していた。このほかにも、バックハウスのベートーヴェンピアノソナタ全集(モノラル)やカール・リヒターのマタイ受難曲なんかもこの頃だった。
そう、ケンプのベートーヴェンの話だった。ケンプのは、何となく聴いてしまう盤だ。僕は、バックハウスのほうが質実剛健のベートーヴェンらしい思っているのだが、何回も繰り返して聴いているわけではない。ベートーヴェンといって、手が伸びてしまのは、ケンプのほうなのだ。
ケンプの演奏は、よくわからない。柔かな印象を受けるがそれだけでは収まらない。問題作である。繰り返し聴いて、何者が突き止めたい想いに駆られる。
ケンプは気になって、ヴァイオリンソナタも手に入れた。シュナイダーハンと組んだものだ。こちらも鋭意聴き込み中である。
答は言葉にできなくてもいいから、何となくこんな感じとわかればいいと思っている。音楽の専門家ではないから語彙もないし。